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GINZA Chainerインタビュー
~スラッグス 佐々木昭憲氏~

Chainer「GINZA CHAINER」では、銀座の街の四季折々の表情やニュースを私独自の目線で紹介していきます。チェーンのロゴには、銀座での出会い、繋がりを大事にしていきたいという思いが込められています。今回はヴィンテージ・ハードリカー専門のバー「スラッグス」のオーナー、佐々木昭憲氏にお話を伺いました。佐々木氏は元写真家であり、オールドハーレーの持ち主でもあり、多彩な趣味をお持ちです。自らエージングしたシガーを吹かしながら、LPから流れるジャズの調べに酔う空間が迎えてくれます。

 


 

「銀座の寿司屋」「銀座のクラブ」「銀座のブティック」「銀座の呉服屋」頭に“銀座”をつけると特別な雰囲気が漂います。「銀座のゴミ捨て場」ですら、何かいいモノが捨てられていそうで、見てみたい気になるから不思議です。
そんな銀座でバーを開いて、20年近くになります。憧れだけで出したものの、当初は苦戦続きでした。不安と後悔のなか、記憶に残る出会いがありました。

 

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その人は誰もいないカウンターの端の席で、ウイスキーを2杯、ゆっくりとしたペースで飲み干すと、「また来るよ」と言って立ち上がりました。そのあまりにも自然な身のこなしに、昔からのお客さんのような気がして、つい弱気な本音が口をついて出てしまった。「大丈夫ですかね?…この店」。その人は「大丈夫、俺が来たから」と笑顔で出て行きました。
その後、本当に頻繁に来てくれるようになりました。ある時は部下と、ある時は学生時代の友人と、そしてほとんどは1人でカウンターの隅に。
満席になった時は席を譲ってくれ、何年も隣で飲んでる人とも名乗りあうことなく会釈のみ、何のために酒を飲んでいるのだろうと思うほど酔って乱れる事はなく、それでいて楽しそう。
その人に限らず、これはほとんどのお客さんに共通しているスタイルで、「銀座の客」も、また然り。

 

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何年か経ったある日、その人はこんなこと言いました。「銀座はね、バリバリ仕事をしている時だけくる場所だよね。そうじゃないと、よそよそしい街になる」
それからしばらくして、徐々に姿を見せなくなりました。それは、初めて来た時と同じように自然に。
気がつけば、あの人はどうしたのだろうと思うことが時々あります。定年なのか、引退なのか。その去り方は、皆一様に余韻を残しながらもあっさりと。これが「銀座の別れ」というものなのかもしれません。

 

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最近の私は、カクテルのレシピをド忘れしたり、レコードの溝に針を落とし損なったりと体たらくですが、その度にエヘヘとごまかし、今夜も「銀座のバー」のカウンターに立っています。果たして彼らのように、さらりとこの街を去ることができるのでしょうか。

「オールド・リップヴァンウィンクル」という名のバーボンがあります。日本でいう浦島太郎のような、アメリカの昔話です。リップヴァンウィンクルはおいしい酒を飲み、楽しい夢の中に20年いました。

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